就活連載企画 No.1 アニメ常用者の告白

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ブログタイトルはトマス・ド・クインシーの著作が元ネタです。

 

 

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突然ですが、外に出て写真を撮りました。

今は出先の岐阜県高山市米澤穂信さん原作のアニメ『氷菓』でご存知の方も多いかも?)からこの文章を書いております。

 

さて、このたび当ブログの就活連載企画のトップバッターをつとめることになりました「えびす」です。

よろしくお願いいたします。

 

ちなみにハンドルネームの由来は……、

 

  • ブログには読者への「取っ付きやすさ」が必要だろうということ。
  • 共同ブログ参加者がハンドルネームで寄稿していたこと。
  • 苗字の語感が近いこと。

 

の3点を考慮して、いつも笑っているイメージがある七福神・恵比寿から借りました(各種SNSは本名で運用しているのですが、字面がいかついので止めました)。

 

 

ともあれ、今回は制作進行職を目指した人間の就活談や、それに先駆けて行ってきたことについて記そうと思いますので、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

つたない文章ながら、何かしらの糧にはなるでしょうから。

 

 

自己紹介

 

本題に入る前に、まずは簡単な自己紹介をしましょう。

以下、しばらく箇条書きが続きます。

 

  • 現在21歳の大学4年。現代思想(いわゆる「哲学」から「サブカルチャー」まで)を広く浅く学んでいる。
  • 2019年の4月から、都内のアニメスタジオで制作進行として働く。
  • 就活はアニメスタジオに対してしか行わなかった。
  • 周囲が就活を意識し始める頃(大学3年の前後)は、大学院進学を志望していた。
  • 趣味は読書、アニメ鑑賞、音楽鑑賞、旅行。

 

ざっとこんなものですね。

 

加えてもう少しアニメとの接し方について記すと、毎クールの作品を追い続ける姿勢というよりは、DVDレンタルや動画配信サービス等を使って気になる作品を少しずつ、しかしコンスタントに視聴してきたタイプだと言えます。

要するに、半生の片隅にいつもアニメがあり続けた、そんな人間です。

 

志望のキッカケ

 

さて、アニメに親しんでいたとはいえ、(学問への興味から)院進を考えていた人間がどうしてアニメ制作業界を志望するに至ったかというと、かなりベタな体験がありました。

 

話は大学3年の夏休みに遡りますが、当時私は1カ月ほど上海におりました。色々ありまして、大学が奨学金をくれたのです。

 

そして、その過程で現地大学に編入することになったのですが、ある日そこの日本語学科の学生数名と交流が生まれました。

すると彼らの口から出てくるのは日本のアニメや小説といったコンテンツの名前ばかり!

先ほども名前を出した米澤穂信さんの作品が好きだとか、『TARI TARI』の聖地巡礼をしに来日しただとか、『CLANNAD』は““人生””だとか、色々と熱を持って語ってくれたのでした。

 

もっとも、これらのエピソードはもともと日本に興味を持っていた学生の特殊な例かもしれません。

しかし、他にもこんなことがあったんです……。

 

というのも、滞在最終日に私は郊外の音楽フェスに遊びに行きました。

そしてその日のトリをRADWIMPSがつとめたのですが、『君の名は。』の主題歌・≪前前前世≫を歌う段になって、会場では“日本語で”シンガロングが起きたんです。

 

日本のアニメコンテンツやそれにひもづくコンテンツが越境する瞬間に生で立ち会ったこと。これが印象的で、アニメ制作業界に進もうと決意しました。

 

学生時代にしていたこと

 

アニメビジネスに関することとしては、3点あります(活動開始時期はいずれも大学4年への進級前後から)。

 

 

まず1つ目は、W@KU WORK(ワクワーク) 」というメディアで学生サポーターをやったこと。

業務内容はメディア内で掲載する記事を書くライター業務と、イベント設営が主でした。

すでに現場で働いている方のお話を伺えたり、似た志を持つ同世代と多く知り合うことができましたね。

 

 

そして2つ目は、AEYAC(エイヤック)」という京都のNPO法人を介して、関西圏の業界関係者と交流を持ったこと。

というのも、大学卒業後は関西に住みたいとも考えていたのです(近年は京都に拠点を持つスタジオさんが増えましたからね)。

そして、生活の場としての関西では勝手がわからないことも多そうだったので、AEYACさんが主催するイベントがあれば関西に伺っていたというわけです。

 

(※とはいえAEYACさんは東京でも交流会を開いてくれますので、「関西は遠いなぁ」と感じる関東圏の皆様もご安心を!)

 

 

最後の3つ目は、業界関係者のトークイベントに積極的に伺うようにしたこと。

ちなみに、伺うイベントは「イベント内容を外部に発信しないこと」を来場者に課しているかどうかをチェックした上で決めていました。

 

理由は簡単で、そうした制約を課すイベントほど登壇者はうっかり口を滑らせ、業界内部で抱える問題に対する生の声をおっしゃってくれるからです。

 

志望者を増やそうと美辞麗句を並べる会社説明会よりも、私はこういうタイプの空間が好きでしたし、アニメに盲目でいるよりは、そうした空間で語られるネガティブな要素へも耳を傾けて「アニメを嫌いになる覚悟」も持っておくべきでしょう。

 

(唐突ですが、)アニメスタジオ「 TRIGGER(トリガー)」の取締役兼プロデューサー・舛本和也さんも次のようにおっしゃっていますからね。

「アニメが好き」という気持ちをずっと大切にしたいのならば、その気持ちが一生続く居場所を(就職先を)ちゃんと探してください。

じゃないと不幸になりますよ!

 

『アニメを仕事に!――トリガー流アニメ制作進行読本』(2014年、星海社新書)より抜粋

 

後はお金の許す限り、時間は趣味に割きましたかね。

バンドのライブを観に行ったり、ふらっと旅行に出かけたり、古本や古着を買いあさったり……。

 

「制作進行」の業務と展望

 

ところで、私が春から就く「制作進行」とは一体なんぞやと感じる人もいるかもしれません。

 

それを私の言葉で説明することもできますが、ここでは、動画配信サービス「ビデオマーケット」の監査役・増田弘道さんによる説明を見てみましょう。

(読者の皆様とアニメビジネスに関する本とのとっかかりを作ることも、このブログの役割のひとつでしょうから!)

 

制作進行……アニメ制作の現場で管理を担当。話数毎に担当し、スケジュール、作業環境、スタッフ、クオリティなどを管理する。

 

『製作委員会は悪なのか?――アニメビジネス完全ガイド』(2018年、星海社新書)より抜粋 

 

要するに、(たくさんの人が携わり、たくさんの素材が生じる)アニメ制作現場を円滑に回していくための存在、ということになりましょうか。

 (※ちなみに映画のような、「話数」がないのにテレビアニメ1話分よりも尺が長いものを制作する場合は、それを「チャプター」に分けることで対応します。)

 

では、制作進行にはどんなキャリアアップが見込めるのでしょうか。思うに、大別すると2つのルートがあります。

 

1つ目は、マネジメント面を伸ばしていく場合。

 

制作デスク」(制作進行を統括する)⇒「ライン・プロデューサー」(制作現場全体を統括する)⇒「アニメーション・プロデューサー」(制作会社の責任者として、他社との調整を図る)

 

という展望が考えられるでしょう。

 

 

 2つ目は、クリエイト面を伸ばしていく場合。

 

設定制作」(作品に関わる各種設定を管理・把握する)⇒「助監督」⇒「監督」(クリエイト面の責任者。作品のひな型から完成形までをイメージし、各セクションに指示を出す)

または、

設定制作」⇒「演出助手」⇒「演出」(監督の演出意図を実際に画面化する)

さらに、

シリーズ構成」(脚本を基に、ストーリーを各話に配分。複数の脚本家を統括することも)⇔「脚本家」(シナリオライター

 

という様々なケースが考えられるでしょう。

もちろんスタジオによって、役職の呼称やキャリアアップの段階の数は異なりますけどね。

 

また私の経験では、選考の段階でどちらの進路を採るのかを確認し、それに則った新人育成を行うというスタジオさんもありましたし、一方でマネジメント職とクリエイト職を厳格に分け、制作進行からはプロデューサーへのキャリアアップしか認めないスタジオさんもありました。

この点については、ほんとに十人十色でしょうね。

 

ちなみに、私は批評的な観点からクリエイターさん方に意見が述べられるプロデューサー、もしくは脚本家を目指したいなと考えております。

 

就活生に一言

 

アニメスタジオを目指すケース限定のアドバイスですが、スタジオとしての特色をしっかり持っている会社を目指すこと。これに尽きるのではないでしょうか。

 

あくまで一例ですが、「○○が好きだから、○○を制作した御社を志望した」という理由は後ろ向きだと思います。

それ(=○○)が長寿作品か余程の人気を得た作品ならまだしも、映画・テレビ・配信を問わずアニメ作品が飽和している今、すでに世に出た作品に後から携われる機会は多くはないはずですからね。

 

そのように「作品のブランド」でスタジオをはかるのではなく、スタジオそれ自体が特色や強みといった「スタジオのブランド」を持っているかどうかを見極めることが大切でしょう。

 

  • 「スタジオAは出版レーベルを持っている」
  • 「スタジオBはあのスタジオから分社化した」
  • 「スタジオCはカットの回収業務を外注化している」
  • 「スタジオDはデジタル作画を推進している」
  • 「スタジオEはポスプロ以外を自社で行える」

 

などなど……。

「企業分析」と言ってしまえばカタいですが、物語におけるキャラクターたちの属性や関係性を消費するのと同じ仕方で、各スタジオの属性(=特色)や関係性を見つめるのも、案外楽しいものですよ。

 

とまあ、ここまで語ったところで今回は筆を置きます(後ろの章はおまけ的なものです)。

毒にも薬にもならなかったかもしれませんが、つい数カ月前に就活を終えた人間の、まだ埃を被っていない意見を記せたかと思います。

 

それでは、皆様が少しでも良い選択をできますように。

ノットオーフェ・オーデンフレトール!

 

特に好きなコンテンツ

 

書くべきことほぼ上述したので、ここは読み流して構いません。

何に興味を持つ人間が、アニメ制作業界を目指したのか。最後にその一端を書き置きます。

 

映像(TVアニメ)

 

映像(アニメ映画)

 

映像(ドキュメンタリー映画

  • 『FAKE』
  • 『アトムの足音が聞こえる』
  • 『くすぐり(Tickled)』

 

音楽

 

書籍(小説・人文書

 

書籍(漫画)