No.07/野々 アニメ鑑賞の愉しみを広げる

 はじめまして、野々といいます。本稿は、「アニメをより面白く観るにはどうすればいいのか」みたいなよくわからないことを書き連ねたものです。アニメ業界志望者向けというよりアニメファン向けのもの――というか、「昔の自分に知っておいて欲しかったこと」の羅列のようなものです。 

 

 


  アニメの観方に正解も間違いもありませんが、「より良く楽しみ、より良く味わう方法」というのはある程度明文化できるものだと思います。これはもちろん「良い観方」と「悪い観方」があるという意味ではなく、単に「受け取る情報量」を2倍・3倍にしてやれば、2倍・3倍面白くなるというだけのことです。例えば、ストーリーだけを追っていたものを演出・作画の観点から観直し、さらに撮影や音響演出についての知識をかじると、それだけで愉しみは5倍になるわけです。

 というところで、特に需要があるとも思いませんけれども、私が「アニメ」というものに素人なりに前のめりに接してきたなかで、「これは視野が広がったな」と思えるものなりことなり書籍なりサイトなりを紹介していこうと思います。

 

◎メモを取る

「いきなりメモって何だよ」と思われたかもしれませんが、アニメに限らず「自分が考えたことをデータベース化しておく」ということは、人生の様々な局面で役に立つと思います。Evernoteあたりの“後で検索可能なもの”に書きためていくのがいいです。ここでは「視野を広げる方法」として、ある程度効果があったであろう方法を紹介します。

  1. 作品名・話数・サブタイトルを書き、感想や考えたことなどを箇条書きにしていく。
  2. Wikipediaの各話リストから、脚本、絵コンテ、演出、(総)作画監督の名前をコピペする。もしくはアニメスタッフデータベースをそのままコピペする。
  3. 気になった話数のスタッフはGoogleで検索し、アニメ@wiki、演出@wiki、作画@wikiのいずれかを参照する。過去の担当話数が載っているほか、有名な人だと解説も付いていたりする。
  4. 同時に自分のメモ内でも検索をかけてみる。「あー〇〇の××話やってた人か〜」などと独り言を言いながら納得したり驚いたり感動したり身悶えたりすることができる。

これだけでも大分視野が広がりますし、自分の考えが整理できると思います。大体こんな感じですね。

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◎とりあえず『アニメージュ』を読んでみる

アニメージュ』は、いわゆるアニメ雑誌三強(『アニメージュ』、『ニュータイプ』、『アニメディア』)の中で、最も歴史のあるアニメ雑誌です。今はわりとライト層向けな気もしますが、結構コアなインタビューや連載が載っていたりします。1冊大体1000円くらいで、発売日に売り切れたりすることもわりと頻繁にあるのですが、最近dマガジンのラインナップに追加されまして、なんと1か月400円(税抜)で読めるようになりました。「アニメを作る人がどういうことを考えているのか」をとりあえず知ることができると思います(dマガジンでは『アニメディア』も読むことができます)。

 

◎とりあえず『グレンラガン』を観てみる

 これは私が『グレンラガン』好きだからとかそういう話ではなく、WEBアニメスタイル今こそ語ろう『天元突破グレンラガン』制作秘話!!というミニインタビュー集が載っているからです。「各話のスタッフがどのような仕事をし、それに対して監督がどのようなアプローチを取っていくのか」「限られたスケジュールの中で、どうやって良いものを作っていくのか」等々がよくわかります。また、今石洋之監督自身がかなりの作画オタクなこともあり、カット単位・アニメーター単位の話もかなり細かく読むことができます。加えて、『グレンラガン』自体日本のアニメ史をなぞったようなところがあるので、アニメの表現史を知るうえでも非常に勉強になります。

 今この記事を読んでいる物好きなあなたは、恐らく『グレンラガン』を観たことがあると思いますが、そういう方も1話ずつ観返しながらインタビューを読んでいくのがオススメです。全く違った楽しみ方ができると思います。

 

◎『アニメスタイル』を読んでみる

アニメスタイル』というのは、小黒祐一郎さんという方が作っているかなりマニアックなアニメ雑誌です。はじめて読むときは用語がわからず苦戦したりもしますが、頑張って読んでいるとだんだん楽しくなってきて、気づけばバックナンバーを買い漁るようになっています。WEBアニメスタイルコラム特別企画にも面白いものがたくさんあります。 

 

アニメスタイルのイベントに行ってみる

 アニメスタイルではイベントもやっています。マニアックなものが多いですが、新文芸坐のオールナイトなんかは、入手しづらい昔の作品も観れたりします。イベントに来るのが難しい方もアニメスタイルチャンネルに入会すれば、イベントの前半部分を観ることができます。

 

◎アニメブログを読んでみる

 プロ顔負けのブログを書いている方が一定数いらっしゃいます。あくまでファンコミュニティなので、これが一番とっつきやすいかもしれません。個人的によく読むものをいくつか紹介します。

boogyman's memo

C is for Comic作画語ってみた。「ざわめきを作画する」は必読

Paradism

OTACTURE

雑感雑考

GOMISTATION

あにめマブタ

英語ですが、SAKUGABLOGもオススメです。高校英語程度の構文把握力と英辞郎があればなんとか読めます。TOEIC対策にもなるかもしれません。*1

 

◎アトロクを聴く

 ちょっと変化球ですが。アトロクというのは、TBSラジオで放送されているカルチャー・キュレーション番組『アフター6ジャンクション』のことです。タマフルの後番組ですね。アニメファンの間では、井上俊之神が降臨したことで有名です。氷川竜介さん、藤津亮太さん、土居伸彰さんといった評論家・研究家の方もよく出演しています。最近では、映画評コーナーで宇多丸さんが『若おかみは小学生』を絶賛していたりもしました。 アニメを特集しているか否かに関わらず、勉強になる面白い番組です。 

 


◎書籍紹介

アニメをもっと愉しむための書籍を主観で紹介します。

 

神村幸子『アニメーションの基礎知識大百科』

アニメーションの基礎知識大百科

 ここまで書いておいて何ですが、「いや絵コンテって何だよ」「撮影?アニメってカメラで撮るの?」って人も一定数いると思いますので、とりあえずこの本でアニメ制作の基本を学んでおくと良いと思います。私はこの本とSHIROBAKO用語集作画@wikiの用語解説を辞書代わりに使っています。

 

富野由悠季『映像の原則』

映像の原則 改訂版 (キネマ旬報ムック)

 正直かなり読みづらい(難しいのではなく読みづらい)のですが、映像の見方が変わります。わりとサンライズ流の演出論というか、例えば慣例的に演出家が音響監督を兼ねる東映アニメーションなどとは大分趣向の違う演出論な気はします。松尾衡さんや渡邊哲哉さん、松尾衡監督に演出を学んでいた安藤尚也さんあたりは、この本で言及されている上手[カミテ]下手[シモテ]の原則にかなり忠実な演出家だと思います。もちろん富野さん演出の分析とかしてみても楽しいと思います。映画好きの方は塩田明彦『映画術 その演出はなぜ心をつかむのか』も合わせて読むと良いと思いますが、それについては私がまだ読んでいる途中なので割愛します。

 

高畑勲『「ホルス」の映像表現』

「ホルス」の映像表現 (アニメージュ文庫 (F‐002))

太陽の王子ホルスの大冒険』について、高畑さん自ら解説した本。正直に言うと、私は『ホルス』のすごさを理解できていないと思うのですが、『わんぱく王子の大蛇退治』なんかと比べると、『ホルス』の革新性みたいなものが見えてくるような気がします。昔の東映動画の作品は、アマゾンプライムで結構観れます。

 

絵コンテ本

ルパン三世 カリオストロの城 スタジオジブリ絵コンテ全集第II期

 好きな作品の絵コンテ本は、一度目を通しておくと良いと思います。

 

UN-GO 會川昇脚本集 : 坂口安吾原案 明治開化 安吾捕物帖』

UN-GO會川昇脚本集 (ANIMESTYLE ARCHIVE)

 脚本と完成映像を見比べることで、「“映像で物語る”とはどういうことか」が見えてきます。単純に脚本だけ読んでも面白いです。密度がすごい。

 

氷川竜介『アニメ100年ハンドブック(ロトさんの本Vol.37)』

アニメ100年ハンドブック ロトさんの本Vol.37

 日本のアニメ史100年分がハンドブックサイズに収まった1冊。必読と言いたいところですが、現在入手が難しくなっているかもしれません。めちゃくちゃ勉強になります。

 

大塚康生『作画汗まみれ』

作画汗まみれ (文春ジブリ文庫)

 最近読み始めたばかりなので何も言えないのですが、とりあえず読んでおいた方がいいと思います。作画に関することだけでなく、初期東映動画の裏話も読めて楽しい。

 

『月刊MdN』2017年11月号(特集:アニメを観たり、語るのは楽しい。でも……撮影を知るとその200倍は楽しい!)

月刊MdN 2017年11月号(特集:アニメを観たり、語るのは楽しい。でも……撮影を知るとその200倍は楽しい! )

 撮影を特集した貴重な雑誌。そもそも撮影って何?という話から、具体的なエフェクトまで細かく解説されています。有名な作品の撮影効果を載せる前の画面と完成画面との比較が載っていて、本当に面白い特集です。合わせて『アニメスタイル007』の『響け!ユーフォニアム』特集と、泉津井陽一さんによるもっとアニメを知るための撮影講座も読めば、あなたも立派な撮影オタク。*2

 

『月刊MdN』2018年10月号(特集:アニメの作画)

月刊MdN 2018年10月号(特集:アニメの作画)

 つい最近出たばかりの『MdN』の作画特集号。特集されているアニメーターが若手の方中心で、アニメファンには嬉しい一冊。「ここに注目!『作画』の楽しみ方7」なんてものも載っていたりします。余談ですが、『Fate/Apocrypha』22話と『ヤマノススメ サードシーズン』10話は間違いなく歴史になっていくので、リアルタイムで楽しんでおいた方が良いです。10年後にしたり顔で玄人ぶることができます。

 


◎おまけ

作画の時間、演出の時間、絶望の時間——山下清悟・平川哲生の対談

 平川哲生さんの個人サイト「ぼくえん」に載っている有名な対談。とんでもなく面白いので、読んだことない方は是非。

もっとアニメを観よう(旧WEBアニメスタイル)

 観るものが多すぎて困るこんな時代ですが、「もっとアニメを観よう」。この一言に尽きると思います。

 

 


*1:作画に興味が出てきたらSAKUGABOORUも使ってみるといいと思います。

*2:吉成曜さん担当カットの撮影を見れるドキュメンタリーもあります。作画を生かすも殺すも撮影次第だということがよくわかります。